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妻の実家にある木の囲炉裏では、皆が集まると自然に酒宴が開かれる。春は山菜、夏には鮎、秋の茸に冬には猪鍋。そこで調理される食材は、自然の恵みを感じさせるだけでなく、囲炉裏という名シェフが作る料理となり、身体中の疲れを癒してくれる。
妻は新潟生まれの一人娘。大阪へ嫁ぐなど、皆が大反対だった。実家へ挨拶に行くと、歴史を感じる家の柱に圧倒され、中で集まる親戚を前に、針のむしろに座ったようだった。その時、唯一味方になってくれたのが、祖父だった。「好きな人と一緒になって幸せに暮らせ。」そう言うと、美味しそうに煙草を燻らせ、太い柱に寄りかかった。
あれから二十年、祖父は亡くなり、古家も建て替えられたが、あの柱だけは囲炉裏として残っている。囲炉裏はまるで孫娘を見守る祖父のように、優しい炎をともしながら生き続けている。私にとってそこでの時間は、祖父に今の幸せを報告する至福の時でもある。