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風の通る特等席で居眠りする母は86才。それが財産という彼女につながる沢山の家族。そして自慢の丈夫な胃と歯。今日も孫達が次々と差し出す串焼を食べ、ビールでのどをうるおし、今は夢の中。どちらかと言えば無口で無愛想おまけに引っ込み思案の人である。私も妹もこの無器用さを愛し、反面教師として学んだおかげで実に頼もしく楽しい友人達に恵まれている。この母から生れる俳句は味わい深い句が多く実像とのちぐはぐさに戸惑いつつ見直してしまう。「補聴器をはづし涼しさ戻りけり」なんて手帖に見つけると、とても愛しくなる。
食べることが好きな母に、身近な目標を持ってもらうには「寒くなったら美味しいなまこやカニを食べに行こうね」などが最高の殺し文句となる。「私は倖せもんやわ・・・」といつも言う母のこのいぶし銀のゴールデンタイムを私と妹は叱咤激励、飴と鞭の笑いの中で大切に大切に育んでいる。
・・・夏雲を船に見たてて夢の中・・・則子