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2008年受賞作品

銀賞

  • タイトル
  • 忙中の閑、幸せな瞬間(とき)
  • 受賞者
  • 神奈川県 小泉 博 74歳
  • 賞品
  • JTB旅行券5万円分

『忙中の閑、幸せな瞬間(とき)』小泉 博

教員を定年退職した後立ち上げた不登校の子ども支援NPO。気がついたら、風邪も引けない状態のまま十年が経っていた。
 「二、三日のんびり山の湯に浸かりたい」ふともらした一言。女房から息子に伝わったらしい。「暇は自分で都合して。後はおれが面倒みるから」と、言う。かくして、師走の最終週、群馬県四万温泉、老舗宿の特別室での連泊が、彼からのお歳暮となった。だが全てに贅沢過ぎて何だか落ち着かない。だからだろう、時ならぬ真夜中に目が覚めた。やむなく寒々と光る満天の星空を眺めていた。と、わが身の貧乏性が急に可笑しくなった。
 宿の向かいにある水晶山の頂が、ほんのりと明るくなる。稜線がシルエットになって夜明けとの境界を際立たせる。一昨日まで降っていたという屋根の残り雪が溶け出して、軒先にツララの行列を作り上げていた。日の出。ツララが贅沢に輝き出す。元気を取り戻した子どもたちの顔とダブって見えた。

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