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娘は新しいピアノを持って嫁いで行きました。音の消えた部屋で娘の幻を追っている頃、夫が脳梗塞に。以来二人三脚の闘病生活は延々と續きました。回復迄の年月は無我夢中、我に返った私は娘が置いて行った古ピアノの前にいました。娘の駆使した大きなピアノは化石の様に鎮座しています。勉強しようと思ったのはこの時。
師を探し、ドレミから月二回稽古に通いました。老いを忘れ足取り軽く─。和音の妙味や作曲者の心に触れた時の得も言われぬ感動は、弾いてこそのもの。涙の中で弾く曲もありました。勉強の成果は発表会での披露です。
娘と孫が加わりモーツアルトの交響曲第40番第一楽章を奏でました。独奏も勿論です。思いもよらぬ三代の連弾は緊張と達成感と喜びそのもの。又と無い黄金タイムでした。
今私の生活の一部のピアノ、二年がかりで「エリーゼの為に」を仕上げました。機会があればきっと又孫も娘も駆けつけてくれるのではと思って励んでいます。