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夫、81歳。私、74歳。宮古島の海―。
去年、金婚式の祝いの席で、今後やってみたいことある?と友人に聞かれた私が「海に潜ってみたい」と答えたのを、夫は聞いていたらしい。その翌週、沖縄でダイビングの指導者をしている息子のもとに、夫は単身、弟子入りした。潜水物理の勉強に、心肺蘇生術、両手首を水面上にあげたまま15分間の立泳ぎ、等々・・・・・。若いインストラクター候補生と全く同じカリキュラムをこなしたそうだ。但し何倍もの時間をかけて。すべては私を海中世界につれていくためだ。半年間の猛特訓の末に、「オヤジ、もう立派なイントラだよ」とのお墨付。
そして夏、ついに私の珊瑚礁デビュー。浅瀬で練習した後、いざタンクを背負い水深12mの世界へ―。水面から射す光、枝サンゴに群れる魚たち。自分がカナヅチなのを忘れた。「感激の涙で何も見えなかった?」と夫。まさか。夢にまでみた珊瑚礁だもの、瞬きもしなかったわよ。でも海は、夢よりももっときれいだった。