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「僕が定年退職することは、すなわち女房も退職なのだ」と思った。今まで仕事仕事の人生だった。ゆっくりと彼女との旅行などほとんど出来ないまま今日まで来てしまった。彼女もしかりだ。家事全般に追われ夢中で駆けてきた日々だった。「一度沖縄の海を見てみたいわ」以前そう聞いたのを覚えていた。現役最後を締めくくるに相応しい旅は、沖縄に迷うことなく決定した。飛行機の窓から見えるエメラルドグリーンにじっと身動きもしないで見つめる彼女の姿が印象的だった。「今まで支えてくれてありがとう」そう思った。彼女の覚えた沖縄言葉のお気に入りは「ナンクルナイサー」だった。これからのセカンドライフはあれこれ心配するよりも、沖縄方言の「なんとかなるさー」が今の自分と女房の未来をゆっくりと生きていけばいいのさ、と語りかけているような言葉だった。沖縄に来て本当に心が軽くなった。